関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)を目指す文系の高校生にとって、政策系学部も一つの選択肢になります。関関同立には、名称は異なりますが、いずれの大学にも政策系の学部があります。しかし、経済学部や法学部と違って、どのような学部なのか分からないと感じている高校生も少なくありません。むしろ保護者世代が理解出来ていない可能性も高いでしょう。政策系学部がどのようなところか、関関同立の政策系学部のおすすめはどこか?詳しく見ていきましょう。
政策系学部は何をするところなの?
政策系学部の特徴は、世の中で起きている問題に対して、複数の視点からアプローチをして、解決を目指す学問です。政策系学部では政治学、経済学、法学、社会学など複数からなる学問的アプローチで問題の本質に迫り、問題解決を目指します。世の中の問題は、一つの学問で単純に解決できる問題はありません。例えば、貧困問題を解決するのは経済学?法学?教育学?、一つの学問で解決が難しそうなのは分かりますよね。政策系学部は、政治、経済、社会、環境などの世の中の多くの課題に対して複数の視点から問題解決を図る学問なのです。
一方、経済学部、法学部、教育学部などと異なり、「何を」学ぶのかが分かりにくい学問でもあります。それはなぜかというと、解決すべき課題に重きが置かれており、個別の学問体系を探求することには重きが置かれていないからです。政策系学部は比較的新しい領域の学部で、学際的な学問領域と言えます。学際的とは、異なる学問分野にまたがっている様子のことを指します。
政策系学部のメリット・デメリット
いろんな学問のつまみ食いができる
政策系学部の授業は、多くの学問領域にまたがっています。法学系の授業がつまらないと感じたら、社会学系の授業を多くとればいいのです。法学部ではそれが出来ません。
専門性がつきにくい
複数の学問領域にまたがるということは、逆に言えば専門性がつきにくいというデメリットがあります。弁護士や公認会計士のような資格を取って就職したい、と思う学生には向かないかもしれません。
また、新しい領域で学際的なので、学問的な権威もつきにくいです。
ビジネス(民間就職)や公務員就職に生きやすい
政策系学部で身につけた課題解決のアプローチは、ビジネスにも生きます。仕事というのは何らかの課題解決をすることです。政策学部の学びで経験する学びのプロセスは、就職に役立つ可能性が高いです。仮説を立て、フィールドワークで調査をし、解決策をプレゼンテーションする、この流れはビジネスの流れと同じです。そのほかにも、英語、IT、基本的な法知識などビジネスに役立つ領域が多く含まれています。
政策系学部は、行政の課題解決をすることが多いですし、政治学・法学を学ぶことが多いので公務員志望の学生にも向いています。
関関同立の政策系学部
同志社大学 政策学部
2004年に新たに設立された比較的新しい学部です。メインの今出川キャンパスから徒歩5分ほど離れた新町キャンパスにあります。政策学部政策学科の1学科制で、2年後期から本格的に始まるゼミによって学びの方向性が変わってきます。フィールドワークが活発なゼミもあれば、そうでないゼミもあり、どのゼミを選ぶかが重要な要素です。1年生のうちからアンテナを張って情報収集をすることが重要です。
同志社大学の政策学部を例に、卒論のテーマを紹介します。実際に先輩方が取り組んだ卒論のテーマです。難しそうに思うかもしれませんが、4年生になれば自分の興味に応じて学びに取り組むことになります。
- 住民自治とコミュニティの活性化
- 政策の終了とaccountability
- 自動車産業の情報産業進出の可能性
- 東アジア通貨統合に対する是非
- アジアの生産ネットワークの将来
- 生活保護制度の沿革と外国人の保護をめぐる問題
- 高齢者の安全と安心 -支援と自立の生活問題-
- 女人禁制の歴史とその変遷
- 日本はTPPに参加するべきか否か?
- 日本経済の構造変化
- 女性ファッション誌にみる現代日本の女性観 -ギリシア神話上の女神像との類似性-
- HEMS普及に伴うライフログマーケティングの可能性について
※<2013大学案内より転載>とのこと
立命館大学 政策科学部
1994年に衣笠キャンパスに設立され、2015年大阪いばらきキャンパスに移転しました。
- 公共政策系
- 環境開発系
- 社会マネジメント系
の3つの学系があります
立命館大学政策科学部を例に、各先生が扱っているゼミテーマ一覧を紹介します。これをながめるだけで、扱う領域の範囲の広さを理解できると思います。
(大学ホームページより、上から15テーマをピックアップ)
- 東南アジアにおける「開発」と「低開発」
- 消費文化とジェンダー・セクシュアリティ
- 企業の競争優位とイノベーションのダイナミクス研究
- 学習コミュニティと情報技術
- 社会と生態系のつながりの研究
- 古典に学ぶ政策立案・実施の知恵
- 持続可能な福祉社会 ―グローバル化する少子高齢社会におけるケアを考える
- Industory4.0とA.I社会・IoT時代のレジリエントな都市のプランニング領域に関する研究
- 現実的・学際的に政策に挑む「リアリスティック・ポリシー・サイエンス」
- 地方行政体制の研究
- 少子高齢化時代の雇用、賃金と社会保障制度の研究
- 資源・エネルギー・環境のシステム分析
- 行政訴訟事件から政策課題を考える
- 地域経済に関する政策課題
- コミュニティ・ディベロップメントの政策科学
関西学院大学 総合政策学部
1995年に34年ぶりの新学部として設置されました。メインキャンパスの西宮上ケ原キャンパスではなく、離れた三田キャンパスにあります。関学を目指すときに、この学部こそ立地ではなく学びの内容で選んでほしい学部です。
4つの学科に分かれており、情報技術や建築技術や空間デザインまで幅広いソリューションを学部として内包出来ているのが他の3つにはない特徴です。
- 総合政策学科
- メディア情報学科
- 都市政策学科
- 国際政策学科
2021年にリニューアル予定で、留学、フィールドワーク、データサイエンス教育の強化がされるようです。世の中の動きにマッチしており、魅力度が上がるリニューアルになっています。立地は置いておいて、学びの内容としてはおすすめできます。立地が悪いからこそ、魅力的な学びを構築しようとするものです。
関西大学 政策創造学部
2007年に設置された新しい学部で、メインキャンパスの千里山キャンパスにあります。
政策学科と国際アジア法政策学科の2学科体制です。
- 政策学科
- 国際アジア法政策学科
公務員試験を目指す学生が多く、学部としても公務員試験対策をより充実させるために、政策公務セミナーを実施しています。一方、最も新しく設置された政策系学部にも関わらず、フィールドワークなどのアクティブな学びが充実しているかどうかは少し疑問で、法学部や経済学部に近いイメージです。
オープンキャンパスでのチェックポイント
政策系学部においてはアクティブな学び、実践的な学びがどれだけ充実しているかが重要だと思います。オープンキャンパスなどでのアクティブな学びについてのチェックポイントを記載しておきます。このほか、人によっては公務員希望者へのサポートなども聞くべきかもしれません。
- フィールドワークがどれだけ充実しているか
(一部の人だけ参加できる、活発なゼミだけ行っている、などの確認) - 少人数の授業がどれだけ充実しているか
(ゼミ以外は大講義になっていないか) - 専攻やゼミなどの選択に関するサポートがどれだけあるか
(情報提供の場がどれくらいあるか、ゼミ選択の条件は成績なのか何なのか) - 他の学部生と協働する場がどれくらいあるか
- プレゼンテーションをする機会がどれだけあるか
まとめ:自分の課題意識のアンテナを立てることが重要
小中高でSDGsの取り組みが増えていますので、政策系学部に興味を持つ生徒が増えるのではないかと予想しています。
世の中は課題にあふれていますが、何を課題と捉えて、どのように学ぶかは自分次第です。領域が広い分、学びに対する主体性が求められる学部です。やりたいことがないから政策系学部を選ぶ、ということでも構いませんが、入学後は積極的に学びに関わらないとつまらない学びになる可能性も高いです。
関関同立といえば、関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学の4大学をさしますが、この4大学は甲乙付け難く、志望校選びには非常に迷うところです。そこで、今回、関関同立を徹底的に比較してみましょう。志望校選定の参考にしてください。[…]